八丈島の思い出
八丈島の飛行機の中に置いてあった冊子。
着陸態勢に入ってから、読みふけってた。
C.C.(カナディアンなんとか?っていうお酒)にまつわる、小説のようなもの。
1ヶ月の長期休暇をもらって、カナダに来た。カナダで行く先もなく、バーを渡り歩いていた。
思えば、行きつけのバーには必ず、C.C.をキープしておいていた。C.C.を飲むと思い出すことがある。
幼馴染とよく、C.C.を飲んでいた。幼馴染は、デザイン会社に就職したものの、会社との折り合いが合わず独立した。
そして、その日も、いつものように、キープしたC.C.を飲んでいた。しかし、幼馴染の顔がいつもと違った。
「なあ、500万円貸してくれない?」
事業に失敗して、当面の資金が必要らしい。
「すぐに、回収できるから、秋には返す。」
俺には、妻がいた。そして、マイホームの資金として貯めていた500万円を貸すことにした。
そして、幼馴染はそのまま消息を絶った。
そのせいで、未だにマイホームの夢はかなっていない。妻にはひどく怒られた。俺は今でも、あいつを恨んでいる。
「ねえ?今、その人がどうしてるか、知りたい?」
少年が話しかけてきた。ああ、知りたい、知りたいよ。あいつが、今、どういう顔をして生きているのか。
「目を閉じて」
目を閉じると、C.C.の臭いにつつまれた。そして、見えてきた光景。アルゼンチンの農場。
俺と幼馴染は、大学生のとき一緒にアルゼンチンの農場にバイトに行った。将来、こういうところで仕事をしたいと二人で語り合った。
「あいつ!」
あいつは、その農場にいた。無精ひげをはやしていているが、まぎれもなく、あいつだ。
「あいつ!生きてたのか!」
って、ここで、話が終わるわけですよ。「続きが読みたかったら、また八丈島に飛行機で来てね♪」ってことなのか。
いや。悔しい。ほんと、悔しい。これを読みふけってたせいで、上空から羽田とか見れなかったんだから、こら、私の時間を返せ。
なわけで、悔しいので、続きを妄想で書きます。
「あいつ!生きてたんだな。」
俺は、気がつけば、アルゼンチン行きの飛行機に乗っていた。あいつ、あいつから、500万円を取り戻せば、俺は幸せになれるんだ!
「おい。サトウ。」
「おおお。久しぶりじゃないか、カトウ。」
「金返せ」
「おいおい。旧友に10年ぶりに会って、いきなりそれかよ。」
「金返せ」
「そんなことより、ここのサトウキビで作った酒うまいぞ。サトウニシキって言うんだ。」
「ん?うまいな。これ。」
「だろ?」
「で、金返せ」
「あー、とりあえず、難しい話は、うちでしよう。」
サトウの家に案内された。なんと、そこは、ハトバスツアーが訪れると言うウワサの鳩山御殿なみの豪邸。入り口に赤いじゅうたんとかひいてあって、ペットがトラ。今にも動き出しそうな鉄の鎧が飾ってある。俺は、リビングに案内され、サトウは奥から、C.C.を持ってきた。っていうか、なんで、リビングなのにテレビが10台あるんだよ。
「サトウニシキもうまいけど、やっぱり、この味が忘れられないんだよな。」
「お前、こんな暮らししてたのか。俺はお前に貸した500万円のせいで、妻には逃げられるし、散々だったんだぞ。」
そうだ。俺は、あのあと、妻に500万円どうにかしろと攻め寄られ、競馬、パチンコ、あらゆる手段で取り返そうとした。そしたら、消費者金融の怖いお兄さんから連日電話が来るようになり、職場も追い出された。なんとか、モスバーガーの住み込みバイトを見つけたものの、妻を失うことになった。
「ああ、キョウコちゃん?キョウコちゃんなら、ここにいるよ?」
「は?」
リビングのテーブルにはサトウとキョウコの写真が飾ってあった。キョウコ。紛れもない。俺の妻だ。
「キョウコちゃんも、最初は500万円返せ。って、俺のところに来たのよ。いやー、キョウコちゃんってかわいいじゃん?だから、俺、『前から好きでした。』って言ってみたのさ。そしたら、キョウコちゃんも『私も』って言ってさ。それから、俺のワイフ。」
な、な、なんなんだ。不幸だったのは、俺だけなのか。俺の知らないところで、みんな幸せヨロシクやっていたのか。
「ただいまー。」
キョウコが帰って来た。
「キョウコ!」
キョウコはきょとん。と、した目で俺を見た。明らかに「ナゼ、アナタガソコニ?」という顔だ。
「キョウコ!俺と一緒に八丈島に行こう!」
〜続きは八丈島で〜
- 鶏のから揚げ
- 牛丼の具
- シメジキムチ
- トマト
- ブルーベリー